カレーときどき村田倫子 #36 KIFUKU

PEOPLE

無類のカレー好き村田倫子が、月に1店カレー屋さんを訪れる連載「カレーときどき村田倫子」。運ばれてくるとっておきの逸品、その向こう側に流れるの十人十色のシェフ&オーナーズストーリー。そんな一皿に詰まったこだわりと、ここにしかない出会いを紐解きたい。 今一番食べたいカレーを求めて、そして、今一番会いたい人を訪ねて。さあ、はりきって、スプーンと筆を手に取ります。 記念すべき令和初となる今月は、連載史上初の神奈川県へ。スープカレーの激戦区と呼び声の高い関内でも人気を誇る名店KIFUKU。北海道の本場の味を踏襲しつつも、神奈川の土地を生かした素材をも大いに盛り込んだオリジナルな一皿。野菜の甘み、お肉の旨味、隠し味はシェフの愛とタフネス。脱サラからこの道を極めたシェフの情熱の味をお楽しみに。


気づけば5月も終わりに近づき、半袖にジーバンで心地よい気候に。

ぽかぽか日差しが気持ち良くて、なんだか最近、寝ても寝てもぼーっとするし、
何をするのもちょっぴり腰が重い。

春の陽気のせいかしら?

いや、きっと足りないのは栄養。
そういえば最近、ついつい、欲にかまけてわがままイートをしていたっけ。
(チョコと食パン、フルーツサンドが主食な日々)

ビタミンをぎゅんと注入をしたいとき、私にはとっておきの子がいる。

そう、スープカレー。

北海道発祥のこの一皿。溢れんばかりの野菜たちがどっさりなのがお馴染みの光景。
何十品目ものお野菜を、大好きなカレーで摂取できるなんて、こんなにも私得なことがあるでしょうか?

そして、スープカレーは私がカレーの魅力に気づいたきっかけ、この連載のルーツでもあるのです。

今日は、そんな魅惑のスープカレーを求めて都内を離れてお隣の神奈川県へ。

実は、神奈川県の関内エリアはスープカレーの激戦区。
都内でいう下北沢のように多くの有名店が軒を連ねてます。

そんな魅惑的な土地で、とっても気になっていたお店が「KIFUKU」。

ビル地下のグルメ街に降りると、そこにお店はありました。ウッディーベースでカフェのように落ち着く店内。

大きなディスプレイには、青々とした海中が揺ら揺らと。地下にいるのに、海の香りを感じる癒しの空間。

迎えてくださったのは、岡野さんご夫婦。旦那さまが本場で修行をしてきたシェフとともにキッチンに立ち、笑顔が素敵な奥様がホール業務を全面的にサポート。ご夫婦の連携プレーが光る、お家のような温かなムードです。

席に座ったら、さあて、さっそくオーダーを。

注文のアレンジが自由自在に効くというのも、スープカレーの大きな魅力の一つ。オススメを聞きつつ、あれもこれもと悩みます。

まずはベースとなるメニューを選び、そこから自分仕様に仕立ててゆきます。

①スープの種類を選択し(ここからすでにとても悩む)
②辛さのレベルを決める(辛いのが苦手な人もこのシステムがあるので心配無用◎)
③仕上げに追加トッピング(あれもこれもと迷います)

と、今の気分にぴったり寄り添う、自分だけの一皿をオーダーメイドしていきます。この時点からわくわくして楽しいのよね、スープカレー。

じゃーん、こちらがKIFUKU特製&村田仕様の「骨つきチキンの16品目野菜スープカレー」(1500円 ※トッピングは各種別途)いちごラッシー(450円)も添えて。

スープは「定番のチキンベース」、辛さは「10」の追加ブロッコリー。
スープカレーの追いブロッコリーは私の“マイルール”なのです。
素揚げしたこの子のスペックは沸点なので、みなさんもぜひ。

お皿のフレームから、もう全然に溢れてわんぱくなお野菜たち。
色鮮やかで、弾けそうな身。ピチピチで良い子揃いだというのは、視覚から十分に伝わります。

本日のラインナップは、キャベツ、かぼちゃ、パープルヘイズ(ムラサキ人参)、アイスプランツ、あじいち大根、ひのなかぶ、ナス、水菜、パプリカ、ごぼう、しれとこ人参、れんこん、赤カブ、むらさきラディッシュ、赤ラディッシュ…てんこもりもりですね!

おすすめは、押し麦入りのライスに炙りチーズのトッピング。これだけでもゴクリと喉がなる。

そこにレモンの爽やかな酸味を足して、カレーのスープに混ぜ合わせると…、そりゃもうたまりません。
(スープではなく、ライスにレモンを絞るのもスープカレーの鉄則だそう。新鮮です!)


素材が生きている。
野菜がただのしゃきしゃきする葉っぱではない。
それぞれが個性を主張し、私の中で存分に個を演じて1つになる。

それもそのはず。なんてったって、KIFUKUのカレーには素材選びから、一切の抜かりがない。

種類豊富なてんこ盛り野菜たちは、神奈川という土地柄を活かし、鮮度の高い鎌倉野菜、三浦野菜を取り入れつつ、その都度旬の野菜をシーズン毎に仕入れているのです。来るたびラインナップが変わるというのも大きな魅力です。

そして、いつもスタメンな野菜たちもいます。大きなごぼうと、個人店にはなかなか手に入らない「しれとこ人参」。その愛の深さには頭が上がりません。

ごぼうは一度煮てから揚げることで、筋が残らず、かつしっかり歯ごたえと旨味も楽しめるようにと、独自のレシピでおめかし。

「しれとこ人参」にはKIFUKUの誕生秘話も隠されていました。

岡野さんの前職は営業マンで、北海道エリアを担当されていました。その頃に本場のスープカレーを食べ尽くし、「自分もお店をやりたい」という思いを抱くようになったそうなのです。

甘みが強いことで有名なこの人参も、北海道で食べた時にそのおいしさに驚いて、「自分のお店でも絶対使いたい」と直談判。しかし、元々は個人店にはおろしていないものらしく、何度か断られたものの、「どうしてもこの人参じゃないとダメなんです」とひたすらお願いをし、異例の形で仕入れられることになったそうなのです。

 

元営業マンの情熱と手腕が光るエピソードは他にもありました。
脱サラからのスタートでつながりもなければ、右も左もわからなかった岡野さん。お客として食べに行った先で打ち解けたオーナーさんの許しを得て、キッチンの見学をさせてもらったり、とにかく実践力で勝負!

農家さん探しも必死で足を使って開拓。畑のおじさんにとびこみで取引をお願いをしたこともあったそう。今の形に至るまで、営業マン時代の手腕を活かしてフレキシブルに奔走した岡野さんの一皿への妥協のない真摯な思い。

しかと伝わりましたよ、岡野さん。口にした人の味覚に正直に語りかけてくるこの情熱。あぁ、カレーは奥が深い。

今年9月で2年をむかえるKIFUKU。名前の由来は、「㐂福・喜福」。スープカレーを通じて伝わる、喜びと幸福を伝えたいという思いから命名されました。

食べ終わった後、なんてぴったりな店名なんだと改めて実感。

そして、スープカレーは、日本の誇るべきソウルフードだなあと再確認した時間でした。心もお腹もほくほく満たされ、たっぷりのビタミンを補給し上機嫌に横浜の街を闊歩しました。これぞ、幸福!

Text:Rinko Murata

Photo:Kayo Sekiguchi

Edit:Miiki Sugita

INFORMATION

KIFUKU

住所:神奈川県横浜市中区真砂町2-12 関内駅前第一ビルB1F グルメプラザ

電話番号:045-662-2088

営業時間:11:30 – 16:00(L.O15:30)/17:30 – 21:00(L.O 20:30)

定休日:日曜日(年末年始・大型連休中は変更あり)

公式HP
http://soupcurry-kifuku.com

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