―何気ない言葉のひとつひとつに、想いがある― 朗読劇『いつもポケットにショパン』三戸なつめインタビュー

CULTURE / ART

80年代初頭に「別冊マーガレット」で連載された、くらもちふさこ原作の人気コミック『いつもポケットにショパン』が、40年の時を超え、朗読劇として鮮やかに蘇る。美しいピアノ生演奏にのせ、ピアニストを目指す若者たちの青春を紡いでいくのは、個性豊かな人気俳優陣たち。6月12日、13日の公演に出演する、須江麻子役の三戸なつめに話を聞いた。


 

ー原作はご存知でしか?

私が生まれる前に出版された作品ということもあって、今回の出演を機に初めて読ませていただきました。私より一回り上ぐらいの方は、みんな知ってましたね。「えっ、あれを舞台でやるの?」って驚いていました。

 

ー今の三戸さんの感性で、原作を読んだ感想は?

初めて読んだ時は、主人公の麻子ちゃんに、ちょっとイラッとしちゃったんです。「ど、鈍感〜!」みたいな(笑)。でも読む進めていくうちに、そこが魅力になっていったというか。なんか放っておけない子なんですよね。幼馴染の “きしんちゃん(緒方季晋)” が、麻子ちゃんに感じていた魅力もここなのかなって。それに、今の私の年代で読むから「もっと人の気持ちに気づいて!」って思ってしまうけれど、自分の高校生活を振り返ってみると、むしろ素直で等身大の女の子なのかもしれないです。

ー出演オーディションがあったとか。

原作のセリフをいくつかレコーダーに吹き込み、それを原作のくらもち先生に確認していただいたようです。麻子ちゃんって、感情の起伏が激しい子なんですね。私もわりと感情を表に出すタイプなので、あまり作り込まずに演じました。迷ってしまったのは、ピアノ演奏に関するセリフ。私は演奏経験がないので、ピアノのことを語る時の気持ちは、ちょっと悩みます。習っておけばよかったなぁ(笑)。

 

ー朗読劇は初めて?

自分の描いた絵本の読み聞かせはやったことがあるんですけど、朗読劇は初めてです。参考にと、いろんな朗読劇の動画を観てみたら、どれもすごく感情豊かに演じてられていて。今回、麻子ちゃんの幼少期から演じるんですよ。その子が高校生になっていくという成長も見せなきゃいけないし、実は麻子ちゃんときしんちゃんのママ役も演じるので、どう変化をつけていこうかと模索中です。

ー実際にセリフを声に出して気づいたことは?

自分なりに台本を読み込んで、いざ声を出してみたら、違和感を感じるセリフがいっぱいあったんです。発している声のトーンと、自分の感情が一致しない。もう一度、原作漫画を読み直しました。「なるほど。このセリフは、きしんちゃんママの言葉が引っかかって出た言葉なのか。じゃあ、その引っかかりを表現しよう」っていう感じで整理して、それをセリフに込めたら、やっとしっくりきたんです。短くて何気ないセリフも「過去を思い出してとっさに出た言葉だな」とか、ひとつひとつにちゃんと意味があるんですよね。迷ったら漫画を手にして、台本と交互に読んでいます(笑)。違和感のあるところは自分なりに解消できたので、あとはきしんちゃん役の小早川俊輔さんとの掛け合いや、演出家さんとのやりとりで、いい感じに調整していきたいです。

ー三戸さんの中で、麻子を演じる上で軸にしようと思った部分はありますか?

漫画を読んでいると、麻子ちゃんって「順位を競うことはピアニストとしてやることではない」みたいなことをよく口にしていて。それでいて「好きでピアノを始めたわけじゃない」とか「ピアノやめる!」とかも平気で言っちゃうんですけど(笑)、その根底には音楽を愛する気持ち、ピアノが大好きだっていう気持ちがギュッと詰まってるんですよね。あとは、きしんちゃんのことを“ひだまり”のように想っている気持ちを持っていれば、大丈夫かなって思ってます。

 

ー三戸さんと言えば、去年主演された舞台『鉄コン筋クリート』での熱演が印象的です。演劇にはもともと興味が?

そうなんです。特に去年は舞台を中心に活動させてもらったんですけど、あの生(なま)な感じが好きなんですよね。舞台って、一度スタートしたらゴールまで感情が途切れないじゃないですか。自分のリアルな感情を見てもらえる場所ってなかなかないし、「いましかない空間」って、すごくいいなって思うんです。

ー劇場に足を運ぶ方も、そこを大事にしてますよね。

ですよね。みんな、それぞれ違った生活があって、異なる感情を持ちながら劇場に来る。そこでひと時の時間を共有して、そこで生まれた気持ちを、また別々の場所に持っていく。そういう不思議な繋がりも、演劇の素敵なところだと思います。

 

ー三戸さんの小さな体から発せられていた、大きなパワーに驚きました。

共演者の若ちゃん(若月佑美)を筆頭に、女子チームのパワーがすごかったんです。私はアクションシーンがなかった代わりに、精神力で負けないようにしてました。あとは単純にペース配分が出来ないので、つねに100%出し切っちゃうタイプなんです(笑)。そういう私をカンパニーのみんなが支えてくれたし、私も「(乃木坂46を卒業する)若ちゃんの門出にふさわしい舞台にしよう」と思っていました。舞台って、どれだけ相手を信用できてるか、心を開けてるかっていうのが芝居にも出るんです。『鉄コン筋クリート』で、それが掴めた感覚があったので、今回の朗読劇でも、小早川さん、そしてピアノ伴奏者の方と、3人で息を合わせていきたいです。

ーピアノの生演奏が入るのが素敵ですよね。

すごく楽しみです!そういえばタイトルに名前が入っていることもあり、ショパンについてネットで調べたんですけど(笑)、人となりがなんとなく、きしんちゃんぽいんですよ。くらもち先生が意識されて描いたのかわかりませんが、それに気づいてから、『いつもポケットにショパン』というタイトルの響きも少し違って聞こえるようになりました。

ー麻子役、期待しています!最後に、様々なメディアでマルチに活躍されている三戸さんですが、芝居を通して発見したことはありますか?

人に優しくなった気がします(笑)。お芝居って「誰か」にならないといけないお仕事で。その人のことを、いろんな角度から考えるんです。それって、愛情や思いやりが不可欠なんですね。役を愛することで、私自身の心も豊かになっていく気がしています。舞台での演技は、自分の感情を思いっきり出せるので、ストレス発散にもなります(笑)。自分の感情メーターを振り切らないとできないお仕事だけど、そこが好きなんです。

 

<コラム・私らしい生き方>

「好き」の気持ちに正直になる!新しいことを始めるのって勇気がいるし、人の目が気になることもあるけど、私はそういう時、「将来なりたい私」のビジョンを明確にします。1年後、3年後、5年後の自分を、それぞれイメージする。まず5年後を書き込んで、「そうなるには、3年後どうしてる?そのために1年後までにするべきことは?」と考えていくのがいいみたい。ちなみに私の目標シートには「5年後にアカデミー賞」と書かれています! ― 三戸なつめ ― 

Profile
三戸なつめ(みとなつめ)/1990年2月20日生まれ。奈良県出身。2010年に関西で読者モデルの活動を開始。2015年には中田ヤスタカプロデュースによる「前髪切りすぎた」でアーティストデビュー。2017年1stアルバム「なつめろ」をリリース。同年12月には、昔からの夢でもあった絵本作家としてのデビューを果たす。2018年からは本格的に俳優としても活動を開始し、ドラマ&映画「賭ケグルイ」や舞台「鉄コン筋クリート」などに出演。映画「パディントン」では日本語吹き替え声優も務めるなど、活動の幅を広げている。


Photographer:MURA
Writer:瀬尾 水穂
Edit:畔柳 涼吏

INFOMATION

朗読劇『いつもポケットにショパン』

<あらすじ>
幼なじみの麻子と季晋は共にピアニストの母親を持ち、遊びもピアノのレッスンも、何をするのもいっしょの大の仲良し。
しかし、季晋は進学と同時にドイツへ音楽留学してしまう。ある日、麻子は季晋が留学先で列車事故に遭ったという報せを耳にし、そのまま季晋とは音信不通となってしまう。数年後、音楽高校に進学した麻子は、先輩から季晋が別の音楽高校に通っているという話を聞く。季晋は事故を生き延び、そして日本に戻ってきていたのだ!
麻子は遂に季晋と再会を果たす。喜びに湧く麻子だったが、季晋はまるで別人のように麻子を憎むのだった…。

原作:くらもちふさこ「いつもポケットにショパン」(集英社文庫<コミック版>刊)
脚本:吉田玲子/演出:酒井麻衣
公演日程:6月11日(火)〜16日(日)
※三戸なつめ出演は6月12日(水)19:00開演 / 6月13日(木)19:00開演 ※30分前開場
場所:新国立劇場 小劇場

公式Twitter
@pocketnichopin

公式サイト
https://www.mmj-pro.co.jp/chopin/

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