ー決死のラブストーリー、男が覚悟を決める時 ー『多十郎殉愛記』高良健吾インタビュー

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4月12日(金)より公開される映画『多十郎殉愛記』。中島貞夫監督が20年ぶりにメガホンを取った本格的なちゃんばら映画だ。幕末の京都を舞台に繰り広げられる闘いと悲恋。日々を無為に過ごしていた男が刀を抜くそのわけとは? 孤高のサムライ“多十郎”を演じる高良健吾に話を聞いた。


—最初にこの作品・この役柄を聞いた時の心境は?

中島貞夫監督の久しぶりの作品であり、時代劇。そして殺陣の稽古もできるということ。通いも入れて1か月くらい稽古をやらせてもらえると聞いていたので、それら含めてすごくラッキーな機会をいただいたと思いました。日本でどこで最初に映画が撮られたのかっていうことに諸説はあるけど、太秦とも言われていて、そしてやはりそれは時代劇で。そういう歴史あるものを自分ができるということが、映画に携わってきた者として純粋に嬉しかったです。

—主演というところでのプレッシャーはありましたか?

プレッシャーはどの作品でもついてまわるもの。もちろん、この作品でも。30代最初の主演としてこの作品をやらせてもらうっていうことも含めて。だけど、いろんな経緯を経て、自分の元にこのお話が巡ってきたということはラッキー他ないという感じでした。

—中島監督の印象は?

ずっと映画に生きてきた方なので、こんなに長く1つのことに情熱を注ぎ続けられること、そんな人生が男としてかっこよく、尊い。そして、羨ましいと思います。やっていたらいろいろなことがあるけど、やっていることが真実だから。監督から教わること、監督を見て感じることが本当に多かった。「映画人生に命を賭ける」なんて言えないし、やれたら最高だけど、そんな簡単じゃない。でも監督は実際に84歳までやってこられて…。そんな人が目の前にいる。やっぱりどう考えてもラッキーだなって。

—1カ月半に及ぶ殺陣の稽古はどんなものでしたか?

稽古は基本しかやっていません。刀の振り、脚さばき、人が来た時のパターンの基本。殺陣の動きは事前に知らされるのではなく、その日現場に行って初めてつくものなので、とにかくベースが命でした。一気にいくつもの殺陣がつくので、それを覚えて…。でも覚えるまで時間をとってもらえるわけじゃなく、撮影は始まっていくんですね。だから、10割は覚えられない。

—ものすごい緊張感ですね。

そう。でも、その時の「次どっちだっけ、どう来るんだったっけ」みたいな瞬間瞬間の緊張感が、そのまま命のやり取りに見えるんです。斬る時に声がかかるんですけど、それを聞いて受け止めるのか、斬るのか。瞬間的に動くんです。だから、稽古は基本を極めるといった感じでした。

—実際に撮影を終えて、感じたことや発見はありましたか?

独特な殺陣だと思いました。殺陣って多くは人を斬ることが目的だと思うんですけど、多十郎の場合は実はそうじゃない。多十郎の振る一振り一振りは、自分の走る道を空けるためであったり、人を散らすためであったり。あと、ずっと走っていたらきついから休憩できる場所をちゃんと確保したり、背に何かあることで気をつける場所が明確になるからあえて竹林で戦ったり。そういう一つ一つの動きや場所に意味があるんです。全ては、人を守るため。大切な人を逃す時間を守るためなんです。

—奥深いですね。

だから、あんなに敵に囲まれて振ってはいるんだけど、実際斬った人数は数人しかいない。そこがこの映画の渋さなんじゃないかな。監督は一太刀一太刀にドラマがあるべきだって思っていて、だからこそ、無意味に人を斬らない。

—そんな多十郎を演じて、彼をどういう男だと思いましたか?

やっぱり、この時代に生きている侍だから、カッコつけなんです。そしてただカッコつけているだけでなく、それが粋であること。そうあってほしいっていうのはありますね。そういう面で言うと、多十郎にとっての“粋”は秘めることだったんじゃないかな。自分の気持ちに気づいていないのか、気づかないようにしているのか。いずれにしても、そういったおとよへの気持ちは、口に出しては言わないので。

—2人のシーンからは、不器用ながらも惹かれ合う男女の様子が伝わってきました。

説明的な映画ではない分、短い時間で2人の空気を作るというのは意識していました。この1シーンで、おとよとの関係性を分からせようとか、多十郎は不器用な男だということを表現しようとか。1シーン1シーン気持ちを早めに出してやることが大事でした。でも、それをやりすぎてもこの映画には合わなかったりして。ものすごく微妙なところなんですけど。

—おとよの優しさや母性、女性としての強さも見どころでした。多部さんの印象はいかがでしたか?

すごい女優さんです。初めて会ったのは10代の頃で、久しぶりにご一緒して改めて思いました。懐が深く、どんなことでも受けてくれる。すごくフラットに支えてくれました。「おとよの愛の形は変わっていく」と監督はおっしゃるんです。最後は母の愛になっていくと。やはり監督のいうことは奥深く、80歳以上の方が言うからこその説得力がありますよね。でも、そんなおとよの懐の大きさや心の強さみたいなものが、実際に多部さん自身の中にもあるものなんじゃないかなって思うほどでした。

—他の共演者の方の印象はいかがでしたか?

木村了くんはとても素直でまっすぐな方。一緒にいてすごく楽しかった。たくさん会話をしたわけではないけど、一緒にいて気持ちの良い人でしたね。寺島さんはピリッとさせてくれる人。そういう人って実はなかなかいなくて、現場に絶対に必要な人だし、やっぱりものすごくかっこよかったです。あと、誕生日が一緒でした。「俺と一緒でよかったな」と言われました(笑)

—ズバリ、時代劇の面白さとはなんでしょうか?

時代劇の面白さは、まずシンプルに日本人がやってしっくりくるということ。日本の映画史の礎になるもので、守っていかなければならないものでもある。あと、男って、棒持ったら絶対ちゃんばら的なことが始まるんですよね。小さな子どもでも。木の棒持ったら、剣になるんです。それは、染み付いていて、受け継がれていて、もう血の中にあるというか。そんなものだと思うんです。渡されるとアガるもの。うまく言えないけど、そこじゃないですかね。

—では、最後に高良さんの思う、見どころを教えてください。

時代劇でなかなかないキスシーンがあります。台本にはないけど、当日に決まりました。きっと監督の中にいろんな気持ちがあったのだと思います。結ばれそうで結ばれないこの時代の男女を観た人はどう感じるのか。うまく言えないけど、多十郎は現代でいういわゆるダメ男な部分もあるので、そこを女性がどう思うのかなというのも含めて気になりますね(笑)。

 

ANOTHER VOICE —シャッターを切りながら

映画から少し離れているようで、決して遠からず。スクリーンのあちらとこちらをつなぐ、心に止めたい言葉たち。インタビューの隙間にこぼれた、生き方や生き様のこと。

「私らしさや自分らしさは、そんな簡単には見つからない。そして、自分が見つけるとも限らない。ふとした瞬間に人が見つけてくれるものかもしれない。だから、なくてもいいもの、見つけるのに時間がかかってもいいものだと思う」

高良健吾(こうらけんご)/1987年11月12日生まれ。熊本県出身。2006年『ハリヨの夏』で映画初主演。その後、『蛇にピアス』をはじめ、数々の話題作に出演。『軽蔑』で日本アカデミー賞新人俳優賞、『横道世之介』でブルーリボン賞主演男優賞を受賞。近年の映画出演作は『シン・ゴジラ』、『月と雷』、『万引き家族』など。

 

写真:関口佳代
取材/文:杉田美粋
ヘアメイク:森田康平
スタイリスト:渡辺慎也(Koa Hole)

 

INFOMATION

『多十郎殉愛記』

4月12日(金)より全国ロードショー

©『多十郎殉愛記』製作委員会

<あらすじ>

幕末の京都。長州脱藩浪人・清川多十郎は大義も夢もなく日々を過ごしていた。小料理屋のワケあり女将おとよに何かと世話を焼かれ、その一途な想いに気付きながらも、頑なに孤独であろうとする多十郎。京都見廻組に浪人の取り締まりが強まる中、腹違いの弟・数馬が大志を抱いて、兄の元へとやってくる。その頃、町方からの注進で多十郎の存在を知った京都見廻組は、新撰組に先んじて手柄を立てようと多十郎の捕縛に動き出すが…。

監督:中島貞夫

脚本:中島貞夫 谷慶子

監督補佐:熊切和嘉

出演:高良健吾 多部未華子 木村了 寺島進

公式HP:http://tajurou.official-movie.com

予告YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=89G72zWwq3E

ASBS

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