カレーときどき村田倫子 #34 カレーノトリコ

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無類のカレー好き村田倫子が、月に1店カレー屋さんを訪れる連載「カレーときどき村田倫子」。運ばれてくるとっておきの逸品、その向こう側に流れるの十人十色のシェフ&オーナーズストーリー。そんな一皿に詰まったこだわりと、ここにしかない出会いを紐解きたい。 今一番食べたいカレーを求めて、そして、今一番会いたい人を訪ねて。さあ、はりきって、スプーンと筆を手に取ります。 今月の名店は神田のカレーノトリコ。斬新なアイデアと贅沢な素材使いは、どの一皿を取っても顕在!インドカレーにドライカレー、期間限定も見逃せない。迷ったら、さあ、あいがけで満足度も増し増しで! ルールを守って、ただただ無心に食べましょう。”気難しい”店主の”気難しさ”に、何よりの愛を感じて。


まず、名前がいい。
だって、「カレーノトリコ」。
すでに虜になっている私も、まだ余白がある貴方もきっと心が惹かれる看板が目印です。
神田駅から歩くこと数分。ガラス越しにカウンターが覗く店内。
縦長の間取りは、どの席からもキッチンが覗ける。そう、全席特等席。


「お静かに」。
一見、身がちょっぴり固くなるフレーズ。

少しばかし緊張した面持ちで私は愛しのカレーを待つ。

張り詰めた店内、忙しなく手が動くキッチン。
じゅーっ。ことこと。ジュっ。ぐつぐつぐつ、、、。

店主自ら背負う “気難しいクソ店主”の文字越しに聞こえてくるのは、カレーのお喋りでした。
煮込んで、混ぜて、焼いて。
立ち昇る香りもなんだかいつもよりぐっと近い。
あぁ、沈黙を意識するとこんなにも音と香りが立ち昇るのか。
知っているつもりで気づかなった、忘れていたこと。
ぶわーっと身体を駆け抜けて、静かに興奮する心。


大きなお皿に大きなしゃもじ。寡黙な店主の大きな愛を感じます。
無駄なタッチをせずに、ふんわりと空気を孕みながら優しく盛られた白米。
ごろごろっと贅沢感のある大ぶりチキンの上に…

じゅわ〜っ。

盛り付けるときも賑やかなカレー。

目の前に現れたときにもう沸点。
待ちきれない!!静けさに結んでいた口を大きく広げて、さあて、いただきます。


独特のアイデアと具材が贅沢に詰まったインド風カレー(¥950)。

スパイスの香りが誘うのは因数分解できない旨味の雪崩。
ゴロンと大ぶりな野菜は、身丈の分、素材の味がしっかり味わえる。余韻までじっくり甘くて優しい。

「美味しい!」その奥に感じるのは馴染みの深い和の心。
スパイシーなのに日本人に寄り添う風味はすっかり私の心を捉える。

カレーの上にかかっていたのは、はじめましてのハーブ。日本人の好みに合いそうと店主が迷いなきー択で選んだ、その名もカスリメティ。お茶っ葉のような味で、後味もすっきり。クセもなく、どこか親しみを覚える味。

インドらしさを求めて、ハーブやスパイスを多用するというよりは、スペイン料理や和食など、あえて一見カレーとは遠そうなものからインスパイアを受けるというのが店主のこだわり。

この一皿は、“囚われない視点”から構築されている。
どおりで一言では、「美味しい」を形容するのが困難なわけだ。だって、多角度から美味しいがが迫ってくるのです。面白いなあ、カレーノトリコ。

そして、もう一つ、ここでどうしても味わいたい一皿があった。

カレーを二種組み合わせることができる「あいがけカレー」(¥1300)より、インドカレーと並ぶ定番メニュー「ドライカレー」と、期間限定ながらもその存在感で堂々と頭角を表す「サバカレー」を!

鯖にぞっこんの私にとって、この夢のコラボは見逃せない。

カレーノトリコでは、我流にトッピングを楽しむのも余興の一つ。
クリームチーズやパクチーやピクル酢の他、その時その時に追加される裏メニューも多数あるのです。

今回は、店主おすすめの裏メニュー、「納豆」と「アンチョビパテ」をオーダー。

納豆は自分の好みで混ぜて、好きなところにかける実家スタイル。

自分の好きな加減で作り上げるのもまた最高。

これぞ、たくさんの“好き”が詰まった唯一無二のカレーなのです。

ごろごろ泳ぐ大きな鯖は、お口の中でも生き生きと跳ねる。
スパイスに溶け合う、青魚の深みと味噌のコク。なんて贅沢なのだろう。

今度は旨味がギュンと濃縮されたドライカレーに、納豆、パテを重ねてみる。
はぁ。
摩訶不思議なコラボは、旨味の掛け算の嵐。

予測より遥かに幸福度を孕んだ解答は、ただただ「美味しい」の一言。
混ぜて一口運ぶたびに、新しい発見に色めき立ち、カレーの奥深さに唸る。

店内に鳴り響くウルフルズを聴きながら、黙々と喜びをを噛みしめる。
ここでしか味わえない、体感するカレー。
旨味のほかに辛さの表現も自在に選べるのがこのお店のもう一つの名物。
辛さは1から10。

2回目以降は、最後にもらえるポイントカードをみせたら隠しゲージが解禁。
なんと前回からプラス10の20辛を選択できる。
3回目は30辛、4回目は40辛…と足を運ぶほど辛さの幅が広がるのです。
そんな粋なはからいも、お客さんを虜にする要因なのかもしれません。

ここだけの話なんですけどね、、、
実は、“気難しいクソ店主”の田邉さんは、キッチンに立つ時を除いては、茶目っ気たっぷりの気さくなお兄さん!
私たちの取材にもジョークを交えながら気さくに応えてくれました。

以前、秋葉原にあった店舗からこちらに移転する際、唯一譲れなかったのが、「これまでから来ているお昼の常連さんが変わらず通える」ということ。
というのも、田邉さんの夢は、「常連さんの最後の出勤日のランチを作ること」なのだとか。

働く1日の中で自分のカレーを活力にしてほしいという思いがあり、そのくらい常連さんへの愛は大きいのです。
だからこそ、カレー屋たるものシンプルにカレーを食べる場所であってほしい。みんなが平等に。

店前の列に並ぶ時のルールや、店内での私語マナーをもうけているのは、そういう思いからなのです。

バイトの1人は、人力舎所属の芸人くわちゃん。
なんと物心ついたときから側にいた幼馴染なのだという。田邉さんのカレーをきっかけに、同じくカレーに目覚め、カレー芸人としてYouTubeを配信。そして今や、田邉さんのカレー作りを1番近くで見る相棒のような存在なのです。
カレーは友情までも紐づける!
また、1番弟子には定期的にお店で鍋を振るわせ、間借りカレーという形でお店を開放。

カレーへの愛と熱量は、そのままお店を支えるスタッフへも通じていく。この寡黙な後ろ姿に、大きな熱い愛を背負っているのです。
あ、この背中を思い出に残したいときは、一言かけてからシャッターを。
これも大事なマナーです。
愛ゆえにちょっぴり気難しい店主に会える、カレーに正直なお店。
愛の表現の形は色々ある、素敵なことを学んだ日でした。

Text:Rinko Murata

Photo:Kayo Sekiguchi

Edit:Miiki Sugita

INFORMATION

カレーノトリコ

住所:千代田区神田鍛冶町3-5 一八ビル1F

営業時間:平日11:00~14:00、18:00~21:00 土曜11:00〜15:00

定休日:日曜日

公式Twitter :@currynotrico

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