カレーときどき村田倫子 #31 and CURRY
阿部さん、お店を始めたらしいよ。
カレー好きの間で今年の夏、話題になり、ずっと想いを寄せていた場所、
「kitchen and CURRY」。
阿部由希奈さん。
連載を愛読してくれている方なら、おやっ?と思ったのではなかろうか。
そう、実は二年前の年の暮れ、この連載で訪れた「カレーの惑星」にて、キッチンで鍋を振るっていたあの綺麗な女性、、、!
約2年ぶりの再会です!
あぁ、あの時食べた阿部さん発案のミートボールカレーwithピスタチオは、今でも私の味覚に幸せの記憶として染み付いてます。
主にカレーのイベントや、間借りでカレーを振舞って来た“流しのカレー屋さん”「and CURRY」、ついに今年の七月「kitchen and CURRY」として阿部さん自身の城がここに築かれました。そう、ここは阿部さんの“キッチン”。すなわち、カレー研究室。ここで日々研究に取り組まれています。
週に二日、木曜日と日曜日にカレーを愛する食いしん坊たちのためにキッチンが開放されます。彼女の研究の成果のお披露目として、そのタイムリーなアイデアをすぐに体感することができる、贅沢な場所なのです。
新代田駅から歩くこと数分、羽根木の洒落っ気たっぷりな住宅街。
都内にこんな場所があったのか、、、!と驚いた素敵な一角にand CURRYはあります。
ロケーションから満点、扉をくぐると、温かみのあるセンスの良い空間がお出迎え。
本日も素敵な阿部さん。
「前回の取材の後、倫子ちゃんの記事を見て食べに来てくれたお客さんが、たくさんいましたよ」と、とっても嬉しい報告を、、、。
あぁ、好きなものと人がつながるのは嬉しいですね。
待ちきれず、さっそく本日のカレーをあいがけ( ¥1300)でオーダー!
ここ、and CURRYは毎日違うカレーがお出迎えしてくれるのです。
さて、今日はどんなカレーに会えるのか!
花椒チキンカレー、黒酢のポークビンダルの2種がけに花を添えるのは、
卵のアチャール、柿と春菊のサラダにキャベツのポリヤル、ライタにライス。
お米は、青森県産のまっしぐらを五分つきに精米したもの。
食材も阿部さんの故郷である淡路島の玉ねぎをはじめ、農家さんとのご縁や季節の逸品野菜などが日々更新!
どの素材も、阿部さんがこだわり抜いて選んだ精鋭たちなのです。
毎日お品書きから、カレーとは紐付けが意外な食材のリスト。
新たな出会いの予感に胸が高鳴ります!
それではさっそく、いただきます。
ほろほろ崩れるチキンにスパイスが引き出す香りが絡み、甘美に口内を満たす。
そこに畳み掛けるように花椒のピリリと鋭角で気品ある辛味が、旨味の余韻をギュンと底上げしてきて、フィナーレまで抜かりなく楽しませてくれる。
可愛い顔して、やってくれる。ずるいです。
お隣の豚さんもなかなかのやり手。
肉々しいボディからじゅわんと旨味の汁が溢れだす。
香辛料と黒酢の掛け合わせは、未開の深みと酸味を心地よく刺激したかと思えば、最後に黒酢の甘みがすべてをふわっと包み込む。
クールとキュートも両面性を備えているなんて、こちらもずるい、、、。
そして、この卵のアチャールのとろっと具合も罪深いのだよ、、、
副菜たちも織り交ぜながら食べるとまた違う表情が見えてくるので、スプーンを取る手は加速するばかり。
「今日の2種カレーは倫子ちゃんが好きそうなものを選んだんです」
と、笑顔で囁く阿部さん。
はい、私、味覚も心も完全にロックアウトです。
女神なのですかね、阿部さん、、、、。愛しさが深い!
カレーのお供におすすめなのは、シュワっと爽快な自家製のかぼすエード(¥500)。
柑橘の酸味とスパイスの香ばしさがカレーの余韻と爽やかに重なります。
阿部さんの手にかかると、素材たちが生き生きと羽を伸ばし、
本来の知っていたようで知らなかったピュアな部分がにょきっと顔を出す。
調理されているのに、より素材本体の甘味、コク、深みを舌先が敏感にとらえる。
スパイスと素材の錬金術を体感しているようで不思議な心地です。
食後はタメーリックミルクでまったり。
少しのお水でスパイスを煮出してから、ターメリックと最後にミルクを入れたもの。チャイをつくるイメージで、茶葉をターメリックに変えたのだという。
ミルクの甘みとたっぷり煮出しされたスパイスのほろにがさが絶妙のバランスで包み込む、、、。
ターメリックをラテに装うという発想、、、。
出会ったこともなければ、考えたこともなかった。
最後まで阿部さんのセンスには驚かされます。
帰り際、目に留まった愛らしい猫のぬいぐるみ。
その愛らしい二匹は、阿部さんの愛猫なのだとか。グレーがももこ、黒模様が晋作。
実物も愛しい、、、(美男美女ですね!)
ももこと晋作が描かれたステッカー、缶バッチ。
これらの売り上げの5割が、猫の保護活動に寄付されます。
卓上だけではなく、細部まで愛が溢れています。
阿部さんのセンスとカレー愛を空間から、口から、鼻腔から、贅沢に吸収して、満ち足りた心。
またすぐにでも、阿部さんの研究成果を味わいたい。
今一番、目が離せない場所です。
Text:Rinko Murata
Edit:Miiki Sugita
Photo:Kayo Sekiguchi
INFORMATION
and CURRY
住所:世田谷区羽根木1-21-24 亀甲新い52
営業時間:[木]11:30~15:00 18:00~21:00
[日]11:30~20:00
定休日:月~水・金・土
HP:https://www.andcurry.com