心をときめかせる日常の煌く瞬間−。注目のイット・ガール、MANON『TEENAGE DIARY』を紐解く

MUSIC

「イット・ガール」というワード自体は雑誌やメディアに消費されてしまって、今となってはそのワードを使うのにちょっと抵抗があるけれど、ハイティーンの煌めきを余すことなく私たちとシェアしてくれるMANONは唯一無二(イット)な存在だ。

「イット・ガール」というワード自体は雑誌やメディアに消費されてしまって、今となってはそのワードを使うのにちょっと抵抗があるけれど、ハイティーンの煌めきを余すことなく私たちとシェアしてくれるMANONは唯一無二(イット)な存在だ。

日本とフランスのダブルなMANONは元祖フレンチ・ロリータなヴァネッサ・パラディのDNAを引き継ぐリリー=ローズ・デップみたいに無垢な少女の表情の中に妖艶さを感じさせ、そのクールな瞳に同性でもドキッとしてしまうし、ぷっくりした唇を見つめているだけで、恋にも似た感情が沸き起こってきてしまう。
そんな天性の魅力を持つ彼女が音楽という武器を手にしたら…そんな夢のような最高のシチュエーションを生み出したのは自身もHNCというアーティストとして活躍し、様々なCMやTV番組の楽曲を手がけるトラックメイカーYUPPA。彼女が愛してやまないDIYなベッドルームポップと、フューチャーベースなどのベースミュージック、そこにキラキラとロマンチックなガーリーさをプラスした新感覚のサウンドは心地よいローファイさがあり、MANONのあどけない魅力をより一層引き立てている。ROOKIEに通づるティーンカルチャーを感じさせてくれるそのリアルな歌詞にも注目して聴いてほしい。そして、そのひとつひとつを宝物のように心にそっとしまっておこう。

7月11日にリリースされるMANONのデビューアルバム『TEENAGE DIARY』にはなんてことない日常だけど、その時にしかない煌きの瞬間がとじこめられている。それをひとつひとつ紐解きながら、心をときめかせよう。

多屋澄礼による『TEENAGE DIARY』全曲解説

M1:xxFANCYPOOLxx
私がティーンエイジャーだった頃は雑誌のお気に入りのコーディネートや憧れのハイメゾンのアイテムたちを切り抜いて、ノートに貼ってコラージュするのが楽しみだった。今のティーンたちはきっと、そんなアナログなやり方じゃなくて、インターネットをサーフィンしてお気に入りな写真やイラストをPinterestのイメージ・ボードに集めてるんだろうな。インスタグラムでハッシュタグをつければ、共通の趣味を持つ女の子と繋がれるし、退屈なんてしてる暇なんてないよね! 映画「レオン」のマチルダのチョーカーやナブコフの「ロリータ」、MANONが「お気に入り=FANCY」を並べてラップしてるみたいに、あなたのFANCYを集めてきてMY FANCYPOOLに飛び込もう!

M2:COCO BOI ROMANCE
ファッションと音楽、常に相互作用し合うふたつのカルチャー。「WEDIDIT」はそのふたつのカルチャーを縦横無尽に行き来するクリエイティブ集団。その中心人物であるカナダ出身のDJ/プロデューサー、ライアン・ヘムズワース。 札幌出身の女性トラックメーカー、Qrionやゆるふわギャングとコラボレーションし、ここ日本でも名前の知られる存在に。オタクを自称するライアン、彼が研究し尽くしたナードなビートにココナッツのように甘い香りを漂わせたリリックを乗せたこの曲を大好きなあの子にプレゼントしたい。マクラクランってワードを聞いて、すぐに「ツウィン・ピークス」が浮かぶような、ナードな男の子と恋をするのってきっと楽しいはずだから。

M3:SWIPE
2014年にミックステープ『Intro Bonito』で世界に衝撃を与えた3人組ユニットKero Kero Bonito。エレクトロやグライム、ベースミュージックやヒップホップを下敷きに、日本語と英語が混在するユニークなスタイルでここ日本でも話題に。以前より「xxFANCYPOOLxx」を聴いてMANONにシンパシーを感じていた彼女たち(セーラ(Vo.)は日英、そしてMANONは日仏のダブルというで共通点も!)、ファミコンの効果音みたいにノスタルジックなチップチューンとゆるっとふわっとしたオールドスタイルのヒップホップの組み合わせがいい感じ♡ティンダーでメンズをSWIPEするみたいに、いらないものはみんなSWIPEしちゃえ。人生そんな都合よくはいかないけれど、スマホの画面の上ではSWIPEする私の指が正義なんだから、心の赴くままにSWIPEしちゃおう。
 

M4:WAVY PINEAPPLE DAYS
"Twinkle Twinkle Little Star〜”英語を覚えたての頃、口ずさんでいたあの懐かしいフレーズ。MANONのローファイなラップによって蘇ってきた甘い記憶がじわりと脳内に広がっていく。日本ではJP THE WAVYのアンダーグラウンド・ヒットによって話題となった「WAVY」。ふわふわとした不思議な浮遊感に、確信犯的に重なるチープなビート。これを聴いた時に一番初めに頭に浮かんだのはインディーポップの名曲Sarah Goes Shoppingの"Yet Another Song About Love&Peace"!トロピカルなビートにあどけないヴォーカル、軽快なコーラスの掛け合いなど、ついつい共通点を見出して、私は嬉しくなってしまいました。これぞミレニアル世代のガールズアンセム!

M5:SOMEWHERE
「ここではないどこか遠くへ(=SOMEWHERE) 行きたい」その漠然とした思いは浮かんでは消え、結局私たちはどこに行く訳でもなく、そのまどろっこしい気持ちを抱きながら日常をやり過ごしていく。ティーンの頃にはこの退屈な日々が永遠に続くように感じるもの。大人になると、その時間は人生においてほんの一瞬だということに気づかされ、少しだけ切ない気持ちになる。歌詞にも出てくる「ヴァージンスーサイズ」を撮ったソフィア・コッポラはティーンの繊細な心境を描く天才。『Somewhere』のエル・ファニングのように、MANONは恋に対してもどこかクールで、夢見がちでありながら、現実主義でもある。プールの水面がゆらゆらと揺らめくように、どこか定まらないティーンの心の動き。サウンドに耳を傾けながらただひたすらにその揺らめきを眺めていたい。

M6:GOMENNE GIRL
ボストン出身、若干18歳でベッドルーム・ポップの歌姫となったClairoやBeach FossilsやTopsなど現行のインディーバンドたちにも通ずる甘く、切ないMANON流のラブソング。「目を閉じても世界の全てにあなたを感じさせないで」そのフレーズをリフレインしながら、目を閉じる。私の瞼の裏にはペトラ・コリンズがファインダー越しに切り取るティーンエイジャーたちの姿が浮かんでくる。80年代にEven As We SpeakがカバーしたNew Orderの"Bizzare Love Triangle"を自分の叶わない恋と重ねていた十代のあの頃の自分って、ナルシスティックで恥ずかしいと、記憶を閉じ込めていたけど、この"GOMENNE GIRL"を聴くと、きっとみんなも同じなんだと勇気を貰える。

M7:BEAT THE BAD LUCK
オルガンの音色から幕を開け、リコーダーやチープなシンセサウンドが飛び交うアップテンポなサウンドにトラジックなリリックが重なる、そんなギャップに私のハートは撃ち抜かれてしまう。この”BEAT THE BAD LUCK"を聴いた時にシンパシーを感じたのはVampire Weekendのエズラ君もフェイバリットにあげていたSuperorganismの"Everybody Wants To Be Famous”。ルーズなリズムにトロピカルなスパイスを効かせたところにシンパシーを感じちゃう。空気感が重なるこのふたつの曲をミックステープに詰め込めば、これからやってくるロング・ホット・サマーさえも待ち遠しくなるよ。

M8:2 LIVE IN A REAL WORLD
ある少女の高校最後の1年間を描いたグレタ・ガーウィグの「レディ・バード」みたいに、少女が大人へと成長してく過程を描いたこの曲。クラスの人気者にもなれないし、恋もなかなかうまくいかない。それに加えて進路や親との関係など悩みは尽きない。そんな女の子は退屈を紛らわすようにNetflixで「ストレンジャー・シングス」に夢中になる。繊細で傷つきやすい少女たちの心を刺激するチルトラップのエモーショナルなメロディー。そのメロディーは教えてくれる。大人になるのに、本当は誰も心の準備なんてできてないんだってことを。

M9:POPCORN CRISIS 
大人になりたくて、つい背伸びをしてしまうけど、心のどこかではまだ少女でいたい、そんなアンビバレントな感情を歌ったこの曲を聴いた後に手に取りたい本がある。それは少女たちの「ナイン・ストーリーズ」として時代を超えて愛されているフランチェスカ・リア・ブロックの「小女神第9号」。女の子たちが大人へと成長していく中で、経験するポップコーンのように弾けちゃいそうな胸のこの痛みやワクワク。幼い頃に大好きだったエレメントをコラージュのようにちりばめながら、胸がぎゅっと締め付けられるような切ない気持ちをMANONはキュートなビートに乗せて私たちと共有してくれるのです。

<作品概要>
■MANON「TEENAGE DIARY」
アルバムタイトル:TEENAGE DIARY
アルバム発売日:2018年07月11日(水)
価格:2,500円(税抜)

<イベント>
■MANON – TEENAGE DIARY Release Party
‪日程:2018年8月29日(水)
‬場所:club asia
時間:Open ‪19:00‬‬‬
価格:2,500円(ドリンク代別)
※CD封入のインビテーションで500円割引。MANONのinstagramフォローでさらに500円割引。

MANON Official Website
https://manon.asobisystem.com/

Text by 多屋澄礼

INFOMATION

Sumire Taya(多屋 澄礼)

ファッション&音楽ライター。レコード屋での経験を生かし、女性ミュージシャン、アーティスト、女優などにフォーカスし、翻訳、ライティング、diskunionでの『Girlside』プロジェクトのディレクションを手がけている。翻訳監修に『ルーキー・イヤーブック』シリーズ。著書に『フィメール・コンプレックス』『インディ・ポップ・レッスン』。『marie

claire style』にて「Girl About Town」を連載中。

ASBS

ライフスタイル・ファッション・ビューティーなどの情報を中心に、東京の今を読者に届けていきます。また、「自然体のオシャレでいられる」「オシャレの居場所を見つけられる」という価値を世の中の女性にもたらしていくことで、人々の生活を豊かにしていくメディアです。