カレーときどき村田倫子 #4 オクシモロン 二子玉川
LIFESTYLE
「春夏秋冬、朝昼晩カレーが食べたい!」そんなカレー好きによる、カレー好きのための連載。持ち物は、お財布とカメラと、ほとばしるカレー愛。自他共に認める、無類のカレー好き村田倫子ちゃんが、都内のカレー屋さんを訪ねます。
オクシモロン:日本語で言う撞着語法。反対の意味の語を組み合わせることにより、奥行きのある印象を生み出す語法のこと。例「永遠の一瞬」、「公然の秘密」、「小さな巨人」、「サウンド・オブ・サイレンス」など。
早くも、第4回目! 今回は、カレー屋さんというよりはカフェのような、見るもおしゃれな『オクシモロン』へ。二子玉川駅すぐの玉川髙島屋S・C 内南館7Fにあり、大きなガラス張りの扉からは、庭園が臨めます。都会にいながら過ごす、ゆったりとした時間。心も休まりそう。
おしゃれで、ゆったり過ごせるだけじゃない。和風のキーマやそぼろを使ったカレーなど、他のお店ではなかなか食べられない味が、オクシモロンの何よりの魅力。学生さんからファミリー層にまで、幅広いファンを持つ素敵なお店です。
内装のテーマカラーは、渋みのあるオリーブグリーン。テーブルやカウンターの明るいブラウンとの相性も抜群。
「コーヒーとプリンもください」
優しく温かみのある店内は、カレーを食べ終わっても、まだもう少しいたくなる。そんな空間。
お皿も店内のテーマカラーに合わせて、作家さんにオーダーしたというオリジナル。彩り鮮やかな野菜や、生クリームを添えた焼き菓子をのせると、絵のようにしっくりくる。マットで、ディープで、そして、ウァーミング。
お店の世界観が凝縮されたよう。
店内の明かりも、丸くて優しい。そこに、頬杖ついた倫子ちゃんが。
これもまた絵になりますね。こっちを見た瞬間、思わず、パチリ。
人が入るとまた素敵さが増す、深度と奥行きのある空間。
「素敵!」カメラマンさんも小さく叫び、角度を変え、背景を変え、何枚もシャッターを切ってくれました。
「カレー専門店というよりは、ちょっとしたケーキがあって、美味しいコーヒーがあって、そして、お店の定番メニューとしてオリジナルのカレーがある。そういう喫茶のような空間にしたかったんです」
そう語るのは、ディレクターであり、シェフの村上さん。白がよく似合う、笑顔の優しい美しい人。(後に成人しているお子さんがいると聞いて、一同唖然としてしまうという一幕も!)
村上さんは、学生時代から料理が好きで、友人を招いてよくみんなで食事を楽しんだという。中でもカレーは身内でも大好評で、その流れでカレーのお店を開こうと思ったんだとか。切り盛りしていた別のお店を経て、オクシモロンへ。お店は変わっても、メニューや味はほとんど変わらないそう。
倫子ちゃんが待ち望んでいた「エスニックそぼろカレー」の食べ方をレクチャーしてくれました。「レモンを絞って、上から順番に崩して食べる方もいるし、ごちゃ混ぜにされる方もいますよ」そして、こう付け足されました。
「自由に食べるのが1番ですから」
エスニックそぼろカリー\ 1,200円
では心して、そして自由に、いただきます!
倫子ちゃんも驚きと喜びとで、こんな顔に!
しっかり肉感の感じられるスパイシーな豚そぼろに、三つ葉、大葉、そしてパクチー! 食べたことのなかった香菜とそぼろカレーのハーモニー。初めてにして、もうクセになる味。
3種盛り合わせ(紫キャベツのコールソロー・にんじんのラペ・豆のマリネ) \ 800円
カラフルな前菜もとっても美味しい。野菜の香りや甘みをそのままに、ほどよい味付けでスパイシーなカレーの箸休めにも最適。
2人以上で来るなら、この盛り合わせのオーダーはマスト。
食後に頼んだプリンを頂きながら、なんとなくメニューに目を落とすと、店名の由来が記してあるのに気がついた。
『「真剣な遊び心」「寛容なこだわり」をそなえたものの見方を忘れないように、
また、いろいろな個性を生かして一層深い味を引き出すことができますように。
そんな意味を込めています。』
プリンをもう一口。“昔”ながらの味わいが“今”に生きていることを噛み締める。
ここに来てから感じていた感覚的なものたち。こじんまりしているのに開放感があって、こだわりを感じながら自由を楽しめる味。
例えばそう、一人で来ているのに、一人じゃないような。
「オクシモロン」という言葉の意味に、強く心を動かされる。
確かに、そうだ。ドーナツの穴だって、決して食べられないけど、あれがないとドーナツだとはわからない。時に不在が存在を存在たらしめるように、世界はいつも、背を向けながら惹かれあって出来ているのかもしれない。
改めて心の中で読み返す。真剣な遊び心、寛容なこだわり。
言葉が静かに腑に落ちる。サウンド・オブ・サイレンスは沈黙の音だ。
ふと、ガラスの向こうに目をやると、ランチに来たお客さんたちがもう列を作っていた。みんな、この味とこの場所に会いに来ている。そう思った。
美味しいカレーと、優しい甘さのデザート、ホッとするコーヒー。
とびきりの時間はいつも、早く過ぎてしまう。だけど、感覚や思い出はずっと自分の中に残るもの。そう、“永遠の一瞬”なのだ。
オクシモロン 二子玉川
電話番号:03-6805-6505
住所:東京都世田谷区玉川3-17-1 玉川髙島屋S・C南館 7F
営業時間:11:00(L.O.18:00)
定休日:元旦
【食べりんログ(倫子隊長による編集後記)】
まるで、某ナチュラル雑誌の誌面から飛び出したかのような洗練された店内。落ち着いた優しい雰囲気を纏う店員さん。まだオープンして間もない新店舗なのに、このふっとリラックスする空間はなんだろう…。
近頃、自称パクチー中毒者のわたしが、ずっと味わいたかったエスニックそぼろカリー。まさに今の私の胃袋のためにあるような夢のメニュー。
みよ、、、この鮮やかな緑のバランス!パクチー、ネギ、三つ葉、大葉、今やときめく香草四天王が君臨したこのプレート。まさか連載でいただくことできるとは、つくづく素敵な企画です(笑)
そぼろの素朴で優しい味に、香草のフレーバーと食感。香草は、濃い味の食材とタッグを組むことが多いけど、なんだこれ新しい…。美味しい。絶妙な組み合わせにスプーンを持つ手がとまりません。
そして、添えつけのレモンがまたいい。
香草とそぼろとカレーの出会いを、そっと静かに背中を押しているような感じ。そうゆうことを何食わぬ顔でスマートにできる、友達がいたなぁ(すごく好きな子)なんて考えているうちに、どんどんお皿の底が見えてゆく。
すべてがピッタリとよき具合にあわさると、こんなにも新しい出会いと深みが出現するとは!スパイスの調合の他にも、このような切り口があるのか!
たくさんの発見と驚きを味わえるカレーでした。
カレーよ、君は奥が深いなあ。
出典:She magazine