カレーときどき村田倫子 #26 beet eat



喜多見に美味しいジビエが食べられるカレー屋さんがある。
そんな噂を小耳に挟み、ずっと頭の片隅にあった「ビートイート(beet eat)」。
人気のためなかなかアポが取れず、片想いのまま年が明けましたが、やっと今回、私の取材で訪れることができることになり、浮足立ちながら、喜多見の駅に降り立ちました。


 
駅から近く、一本入った小道の地下に見つけた看板。
ご機嫌にその地下に降り立つと、ひょっこりお出迎えしてくれる凛々しい鹿の角。あぁ、やっと来られた!


ドアをくぐると、こじんまりと可愛い店内。
入ってきた入り口を見上げると、鹿さんと目が合うので、すかさず会釈。
おぉ、こんな間近で挨拶を交わすことはあまりないので新鮮だ。
中々迫力ありますね…!

カウンターから顔をのぞかせたのは、オーナーの竹林さん。
女手一つでこのお店を切り盛りしています。
気さくな笑顔と、さっぱりと気持ちの良い立ち振る舞い。
お店に来たというより、お家に遊びに来たような温かな感覚です。


 

「はい、できたよ」と、運ばれてきた本日のカレープレート。
せっかく恋い焦がれた場所にきたので、豪華に全部盛り(2,400円)にしてみました。


こんもり盛られたご飯にかかるエゾ鹿のキーマカレー。
そこから反時計回りに、イノシシとさんしょうのキーマ、豆腐とインゲンのカレー、スルメイカのカレー。
盛り合わせに、彩り豊かな副菜、ダルカレー、サンバル、パパド。
見た目だけでも迫力満点! もう得した気がしかしない豪華プレートでございます。


まずは鹿肉のキーマ。口に入れた瞬間、あ、優しい。
不思議と肩の力が抜ける。予想よりあっさりとした口当たり。
そのつかの間、じんわりと優美に押し寄せるジビエの旨味。
“食べやすいのに、食べ応え十分”という素敵な矛盾が居合わせたキーマカレー。優しさの中に、ひそりと身を潜める野生の力強さが一口の中でちょうどよく溶け合って、互いを高め合う。
鹿肉の旨味が、この食べ応えを彩っているのだろう。


「うちのカレーは、素材の味を大事にしています」
マクロビオティックを学び、食に深い理解と知識をベースに調理場に立つ竹林さん。牛乳の代わりに豆乳の使用、なるべくオーガニック野菜や新鮮で安全なお肉を使用したり、素材を味を生かすスパイス使いを心がけている。


そして、驚くべきなのは、このジビエは、竹林さんが自ら仕留めたお肉だということ。
オーガニックの野菜は東京でも手に入るけれども、オーガニックのお肉は買えない。だったら自分で獲ってくればいいんだ、とはじめた狩猟。


勇ましく瞬発的な行動力、芯の強さ、好奇心。自身の目指すものに対する抜かりない熱量。うーむ、見習いたい、、、。


ジビエはどうしてもクセが強いというイメージが先行してしまうが、beet eatで嗜むお肉は、前情報なしにもパクリといただくと、
「ん?なにこの初めましての美味しいお肉?新種の牛さん、豚さん、、?」
というように、ジビエとは気づかないほど口と調和し、新たな味覚の刺激。
舌は歓喜する。


しかし、私たちが普段口にする素材では、どうにも表現できない。
ジビエ特有の野生の深みと甘みが、じんわりと押し寄せるので、このさじ加減には舌を巻かずにはいられない。


ジビエをつかったカレーはもちろん、他の種類も魅力がたっぷり。
とくに個人的推しは「豆腐とインゲンのカレー」。
豆腐をメインにした料理は、よくも悪くもあっさりして、ふわっとした着地になりがちだ。なのに、ここのカレーはマイルドであるのにきちんと締まる。
ましてや、動物性のものは使用していないというのだから、深いところから、ゆったり寄せて包み込んでくるこのコクの根源の正体には首をひねるばかりです。


シンプルなのに、奥行きがあってぼやけない。
竹林さんの人の温度感を大事にする想いと、新鮮な自然の恵みがどうしようもなく滲み出てるからなんだろうな、とカレーを噛み締めながら思う。


さらには、ご飯にもこだわりが。
使用しているお米は、自然農法の神と言われている福岡正信さんが育成した
「ハッピーヒル」というアジア米と日本米を掛け合わせた品種。
ここ日本では、生産が難しいとされている貴重なものです。


とあるbeet eatの取材記事を読み、竹林さんの考えに賛同した農家さん自ら
「絶対にうちの米が合うからつかってほしい」と熱烈なラブコールを受けたのがきっかけだという。
粒がしっかりしていてあっさりした食感、噛むほどに甘味が出てくる風味は確かにbeet eatのカレーと手を取り合って、互いの長所を引き出すナイスタッグだ。


いや、まさかの逆スカウトとは…!
普通の経路とは真逆のルートに驚きです。
真意をもって発信していることは、ちゃんと人の耳に届き、胸を打つのですね。
(私も連載もいろんな人に届いていると嬉しいなあ、、、)


あぁ、全部盛りプレートを頼んだのに、美味しすぎてペロリといただいてしまいました。
大満足!!!!!!(全部盛り大正解!!!!)
お腹は満ち足りているのに、重くない。
私たちの身体は、食に対してこんなにも素直なのですね。


スパイスは辛いもの。
少し前の私は、なんとなくそんな位置づけをしていたけれど、
beet eatのカレーを食べると、スパイスは素材の背中を推してくれる
優しくて謙虚なジェントルマンなのかも、、、。
なんだか、好きな人の新たな一面を垣間見た気がして、ドキッとしちゃう。(ギャップ萌え)
今度は夜のジビエコースとこだわりのお酒を堪能しに訪れたいな。
新しい出会いと感動に今回も感謝。


Text:Rinko Murata
Edit:Miiki Sugita
Photo:Kayo Sekiguchi

INFORMATION

beet eat(ビートイート)
住所:東京都世田谷区喜多見9-2-18喜多見城和ハイツB1F
電話番号:03-5761-4577
営業時間:金〜火12:00-15:00、18:30-22:00 / 木 18:30-22:00(L.Oはそれぞれ30分前)
定休日:水曜日 ※不定休あり