映画『緑色音楽』中村佳代監督×栗林藍希対談インタビュー

映画『緑色音楽』中村佳代監督×栗林藍希対談インタビュー

—この先、どう進んでいいか分からない。そんな分かれ道で、思いもよらない形で愛に触れることの大きな意味。監督の渾身の愛で生まれたすべての登場人物と、それぞれが抱える物語がゆっくりと、確かに動き出す。
絶賛公開中の映画『緑色音楽』で映画初出演となった女優栗林藍希と、いち早く、彼女の“発光”に目をつけていた、本作の監督中村佳代監督。出会いから本作の見どころまで、たっぷりお話してもらいました。
途中、初冬の都会に“緑”を探しに繰り出した二人。その道すがらにこぼれた、あのシーンの撮影裏話や、あのセリフの誕生秘話も。

—お二人の最初の出会いのきっかけは?


中村:うちの末っ子の娘がJKで、インスタでかなりのアンテナを張ってまして…。「こんなに可愛くて面白い子がいる!」と教えてくれたのが藍希ちゃんだったんですよ。私は、当時はインスタもツイッターもやっていなかったので、プロダクションの制作部がフォロワー0のアカウントから直接DMを送ったんです。

栗林:インスタを始めてから、結構DMはきてたんですが、よくわからなかったので、全部返してなかったんですけど(笑)、なぜか佳代監督のには返したんです!

中村:爆弾ジョニー×駅すぱあとの「新気流に乗って」っていうCMだったんだけど、確か、その時藍希ちゃんは爆弾ジョニーも知らなかったから、すっごい調べたんだよね?

栗林:そうです! 親も「相手役の男性はどういう方ですか?」とか電話で聞いて…。「爆弾ジョニーというバンドのりょうめいという方です」と聞いて、めっちゃネットで調べました。本当にそういう人が実在するのか?って(笑)。

中村:返事くれたタイミングもすごかったよね。制作部でもレスがなかなか来ないんですってなっていて、じゃあ他の子に探さなきゃいけないねって言ってた矢先にレスが来たんですよ。

栗林:何かを感じたんです。上手く言えないんですけど…。
 

—それで実際に会ってみるということになったんですね!

中村:いやー、藍希ちゃん初対面から相当怖かったと思う。中学生で一人で新潟から出てきて、会って間もなく、「ちょっと踊ってみて」っていきなりダンスさせられるんだもん(笑)。

栗林:東京で佳代監督に会う日が決まって、こっちに住んでる知人のデザイナーさんに「怖いから付いてきて」とか言ってました(笑)。でも、その時ちょうど事務所の方とお話をする機会も重なってて、マネージャーさんが付いてきてくれたんです。

中村:そうそう! ちょうどこっちのオファーの時期と、事務所に入るタイミングも同じくらいだったよね。でも藍希ちゃんをきっかけに、若手のいい人がインスタにいるっていうのがわかって、娘のJKキャスティングに代わって、自分のアカウントを作って、自分からオファーするようになりました。今回の映画のスピンオフ作品に出てもらった子もインスタキャスティングです!
 

—初めての撮影を経て、心境の変化はありましたか?

栗林:何にも考えられなかった! とにかく必死でした。でも、終わってみるとすごくやりがいも感じて、楽しかったんですよね。

中村:群馬県桐生市でやったんですけど、最初からすっごくよかったんですよ。ロケが終わった時かな、「このままいったらモデルになっちゃう」って思って、つい言っちゃったんですよね。「俳優やったほうがいい」って。あまりによかったから。

栗林:佳代監督にそう言ってもらえたから、自分の中に“女優”という選択肢が生まれました。


中村:私の現場は、リハーサルも段取りもほとんどしないんですよ。ぶっつけでやって、しかもだいたいテイク1を使うんです。でも、最初から良かった。
難しい役だったんですよ。踊るし、泣くし、パンツを渡すっていうシーンもあって(笑)。あと、おさえで抱きつくっていうカットもあったし…。突然それを振られて、「えいや!」ってやっちゃう藍希ちゃんの勢いというか度胸というか、その姿勢には現場がグッときました。

栗林:何もかもが初めてで怖かったし、難しかったんですけど、もうやるしかなかったんですよね。とにかく必死で夢中でした。

中村:誰もいない田んぼのあぜ道で、セーラー服着て踊るシーンがあるんですけど、藍希ちゃん以外全員が電車の中にいるんですよ。私もキャストもカメラも。走ってる電車の中から撮ってて、もうみんなで藍希ちゃんが踊ってる姿にすごい感激して!

栗林:足場も悪いし、風は強いし、ダンスは割と激しいし、大変でした。今だったら佳代監督とも色んなお話もできるけど、もうその時は絶対失敗できない!絶対転べない!恥かけない!っていう気持ちで、踏ん張って踊ってました(笑)。

中村:そういう姿を見ていたので、今回の映画の話が最初に出たのがその2ヶ月後だったんですけど、もうその段階で藍希ちゃんに出てもらおうって思ってましたね。台本も藍希ちゃんで書いて…。


—栗林さん演じるななちゃんはじめ、それぞれのキャラクターの思いの重なりが見える描写がすごく印象的でした。監督がこの映画を撮る上で、大切にしていたことは何でしょうか?

中村:全員当て書きで書いてるので、一人一人のキャラクターにものすごく愛と思い入れがあるんですよね。おまけで出ているような人は1人もいなくて、藍希ちゃんを含めて、私が本当に好きな俳優さんばかりなんです。

栗林:監督の一人一人のキャラクターの設定とかがとっても細やかなんです。

中村:藍希ちゃんが途中で「ななちゃんはどういうキャラクターなんですか?」って質問してきてくれて…。私は俳優の方たちに向けて、こういうキャラクター設定を書いているんですけど。こういうのっている人もいるし、いらない人もいるんだけど、一応全員作ってるんです。藍希ちゃん、ちょっと声に出して読んでみて。


「ななと潤はとてもよく似ているのです。
思春期の、人生ではもう二度とやってこないナイフのような心を持っています。似ているから惹かれあったのかもしれません。ななも潤同様、心の中に大きな穴を抱えています。潤はなぜいつも自分がイライラしているのかその穴の存在をうっすら気付いていたのですが、向き合おうとせず、ゲームで気を紛らわせていました。でも、その大きな穴の存在に今立ち向かうことになったのです。ななはもっと前から自分の中にある穴の存在に気づいている女の子です。
ななも潤もリアルな友達はいません。ななはいつも予備校の談話室に一人でいます。潤もネット上の友達しかいません。ななか自分の心の中のものすごく弱く臆病な部分を知っています。だからいつも気丈に明るくストレートに行動できるよう、祈るような気持ちで毎日を進んでいます」


中村:虹郎くんも前ご一緒した時のイメージがあって、藍希ちゃんとも何度か一緒にお仕事して持っているイメージがある。そういう俳優さんご本人の持つイメージから役柄って、できていってるんですよね。それは大切にしている部分かもしれません。

栗林:私は、このキャストのみなさんのお名前を聞いた時、すごい不安でした。虹郎さんを初めて直接見た時は、もうすっごい緊張して…。ああ絶対にこの人とは話せないって思って、なるべく個人の控え室から出ないようにしてたくらいです。でも、虹郎さん、最初からすっごく優しく話しかけてきてくれて。不安も和らいでいきました。


—この映画の魅力、お二人が思う見どころは?

栗林:個人的には、潤の祖父役の久米明さんとのシーンは印象的でした。役を通して対話できた瞬間があって…。

中村:そう、2人のシーンには脚本にはなかったアドリブの部分もあるんですよ。長く回してたので、撮れたんですけど、2人で作り出してくれた空気があったんです。あそこ、よかったよね。

栗林:すでに観てくれた方もあそこのシーンがよかったって言ってくれる方が結構多くて、嬉しかったです。

中村:それは嬉しいね。「臓器移植」っていうテーマがあること自体がものすごく難しいじゃないですか。そして、難しいことでありながらも、大勢の方に観てもらわなきゃっていう使命があったんですよね。だから、ポップな感じにして、見た人に楽しんでもらえるものにしなきゃって思って作りました。そういう部分で、本当に今回のキャストの皆さんには支えられましたね。若い人にもたくさん観てもらいたいです。

栗林:いつもお世話になってる方や友達がもう結構観てくださっていて…。みんなが「いい映画」って言ってくれます。観ている時は楽しめるんだけど、観終わった時にしっかり考えさせられるって言われて。私自身も撮影の時は自分のことで必死だったんですけど、最近すごく映画のこと、この物語のことを考えています。多くの人にとって、そういう映画になればいいなって思います。
 


作品情報
『緑色音楽』
▼ あらすじ
浪人生の風呂田潤の家は歯科医院で地方都市にある。風邪で歯科医大の受験に失敗し予備校の特待生となった彼であったが、この夏は欠席を続け部屋でネットゲームばかりしているひきこもり生活を送っていた。潤は決められた道を歩むことに疑問を感じていたのだった。歯科医だった父は潤が2歳の時に死去した。現在は母と祖父、そして海外から帰国した叔父の久が歯科医師として家が継がれている。ある日、潤は父の遺品の中から見つけた手紙で、父が臓器提供者であったことを知る。手紙は提供を受けた7人の患者からの感謝の内容だった。それは家族の間で潤だけには秘密とされてきた。大事なことなので大人になったら話すと。予備校の講師達や潤の後輩の女子高生ななが心配して潤の部屋を訪れるが、懐疑的な潤は彼らをぞんざいに扱う。家族にもイラ立つ潤はしかし、ほとんど記憶にない父の、臓器提供とは何だったのかを考え始める。


写真/佐野一樹
取材・文/杉田美粋

INFORMATION

■緑色音楽(54分)
脚本・監督:中村佳代
撮影:浅田政志
出演:村上虹郎、工藤夕貴、久米明、オダギリジョー、岡山天音、玉田真也、木下崇祥、栗林藍希、本間大貴
音楽:never young beach
公式HP:http://www.green-ribbon.jp/gr_movie2017/

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