【12月公開の注目映画】編集部のおすすめ5選


©2016「アズミ・ハルコは行方不明」製作委員会



1.『アズミ・ハルコは行方不明』

原作で物語の大筋は把握していたものの、想定外の映画だった。
1人の女性の失踪、何かを発信したいハタチと、怒りをエネルギーに暴れる女子高生。物語は3つの世代を乗せて、時系列を前後しながら、行き先を告げずに突進していく。

“想定外”は役者陣の新境地もまた然り。男にウザがれるギャル愛菜を演じた高畑充希、浅はかだけどモテる大学生ユキオに太賀、いじめられっ子だった過去を持つ学に葉山奨之。その配役を聞いた時、直感的にギャップを感じた。でも、そのギャップこそが、この物語を映像で観る意義だったのかもしれない。

姿を消した女も、ハタチも、女子高生も、誰もが飼い慣らせない自分を抱えている? 映画を通して残ったのは、そんな感想だった。
自分の存在意義を求めて、男と男の間を彷徨う愛菜や、何か大きなことで周りとの差を見せつけたいユキオ、自分の個性を爆発させる場所を求めてアートにのめり込む学。行方不明なのは、アズミ・ハルコだけではない。
みんな、行方不明な自分を持っているのだ。

不在である人間の顔がみるみる拡散され、不在であるはずの人間を巡って、物事が動き、変わる。生きている限り、人は人に影響を受け続けるということ。それは、目には見えない波紋のように、関わることを予想していなかった人にまで繋がっている。生きているってこういうことだ。
それにしても、女子高生の無敵っぷりは圧倒的だった。確かに、あの頃私たちは無敵で自分たちが圧倒的、だと思って生きていたような気がする。10代20代30代…世代によって受け止め方が異なるのも、この映画の味かもしれない。

▼あらすじ
とある地方都市に住む27歳の安曇春子。独身で恋人もいない春子は、実家で両親と祖母と一緒に暮らしている。老齢の祖母を介護する母のストレスが充満する実家、セクハラ三昧の言葉を浴びせられる会社、どちらも決して居心地のいいものではなかった。
一方、20歳の愛菜は、成人式の会場で、中学時代の同級生のユキオと再会。ユキオの誕生日プレゼントを買いにレンタルビデオ店に行ったふたりは、そこでバイトをしていた同級生の学とも再会する。やがて、ユキオと学はグラフィティアーティストのドキュメンタリー映画を観て、映画に登場する覆面アーティストのバンクシーに憧れ、グラフィティ・アートを始める。行方不明の女性安曇春子の顔とMISSINGという文字を合わせてグラフィティ・アートにし、街中に拡散していく。一方その頃、〈少女ギャング団〉による男性のみを襲う暴行事件が巷を騒がせていた。インターネット上ではその事件と、アズミ・ハルコのグラフィティ・アートの関連が噂され…。

▼Information
『アズミ・ハルコは行方不明』

全国公開中!
原作:山内マリコ
監督:松井大吾
出演:蒼井優、高畑充希、太賀、葉山奨之、石崎ひゅーい他
配給:ファントム・フィルム
公式HP:http://azumiharuko.com
 

 


Ⓒ松竹ブロードキャスティング



2.『変態だ』

「みうらじゅんが今見てみたいポルノ映画を」というコンセプトで企画された本作。監督は、みうらじゅん本人たってのオファーで、劇場映画監督デビューを果たす安齋肇が務めた。
『アイデン&ティティ』、『色即じぇねれいしょん』など、みうらじゅん原作映画のファンはかなり多いと思う。かくいう私もそのひとりだ。
それだけでこの作品を観る理由としては十分かもしれない。
でも、心してほしい。この新作は…ちょっと違う!

あまり前情報を伝えると、この映画の醍醐味である種のショック(?!)が薄れてしまいそうなので、とりあえず、ここまで読んで「何それ気になる」と思った人は、映画館へ。ぜひ我が身を挺して雷に打たれてきてほしい。

主演は、ミュージシャンである前野健太。体を張った変態っぷりと最高な音楽に、思わず、何らかの賞を受賞してほしいと思ってしまった。
女優陣には、セクシー女優の白石茉莉奈、元宝塚歌劇団月組男役スターの月船さらら。他にも市川しんぺーや宮藤官九郎などの実力派俳優も名を連ね、76分に溢れんばかりの個性が炸裂しすぎている。映画ファン、音楽ファン、ちょっとHなファン。誰が観てもかなり楽しめる。

で、物語の感想は?
と聞かれても、えっと、まず何から書こう…というのが正直な感想だ。
とにかくいろんな意味で超越している。ポルノ映画としても、ロック映画としても、そして今の時代の映画としても、はみ出し過ぎている。
しかしながら、音楽と映像が素晴らしくて、久しぶりにシビれてしまった。
やっぱりこれは、ロックだ。
変態という媒介物を通した、唯一無二のロック映画だ。

▼あらすじ
男は、一浪の末に都内の二流大学に進学し、偶然入ったロック研究会での活動をきっかけにミュージシャンとなった。妻と生まれたばかりの息子と共に家庭生活を送りながらも、愛人・薫子との関係を絶てずにいる。そんな中、彼の出演する雪山でのライブ公演を機に、日常は一変する。

▼Information
『変態だ』

12月10日(土)より新宿ピカデリー他、全国順次公開
企画・原作:みうらじゅん(「変態だ」小説新潮掲載)
監督:安齋肇
出演:前野健太、月船さらら、白石茉莉奈、奥野瑛太、信江勇他
配給:松竹ブロードキャスティング アーク・フィルムズ
公式HP:hentaida.jp

 


©Tre Vänner Produktion AB. All rights reserved.



3.『幸せなひとりぼっち』

すごく泣いたけど、「泣ける映画」って言いたくない。悲しい出来事が起きて、涙が出るのは当然だけど、この映画はそういうんじゃない。
人ひとりの生き様に直に触れたような実感を持てる映画だった。
見終わった後も、その人の佇まいを、横顔を、口癖を、そして人生を愛おしく思える、いつまでも胸いっぱいの拍手を贈れるような映画とはそう簡単には出会えない。

59歳のオーヴェは最愛の妻に先立たれ、会社までクビになる。
彼の口癖は、「バカどもが」。
ルールに厳格で、他人の駐車ひとつ黙っていられない、近所の鼻つまみ者だ。
そんなある日、郵便受けに車をぶつけられての、最悪な来客。
彼が最も嫌うルール違反の車に乗って、隣にひとつの家族が引っ越してくる。
衝撃を受けたのは、郵便受けだけではなかった。
家族との出会いで紐解かれていく壮絶な人生と、溶かされて行く凍った心。

悪態をついてばかりいるオーヴェが妻の墓前でポツリと呟く。
「寂しいよ」その一言に、胸がいっぱいになった。
ありきたりな感想かもしれないけど、心の底から嫌な奴っているだろうか。
そして、心の底から孤独でいいって思っている人って本当にいるだろうか。

近所にいたらすごく嫌かもしれない、こんな人。
そう思ってたのに、最後には大大大好きになっていた。
人に出会って、その人を知っていく毎に徐々に気持ちが変わっていくあの感じ。人間ってなんて愛おしんだろう。
今だって、あの佇まいを、横顔を、口癖を、そして人生を愛おしく思える。
この映画は、私にとってはささやかな奇跡だ。
いついつまでも彼の人生に手を叩いていたい気持ちだった。

▼あらすじ
愛する妻を失い、哀しみにくれるオーヴェ。一人きりで生きる人生に希望を見出せず、墓参りの度に失意を募らせていた。そんなある日、隣の家にパルヴァネ一家が引っ越してくる。車のバック駐車、病院への送迎、娘たちの子守・・・困惑するオーヴェのことなどお構いなしに、次々と問題を持ち込むうっとおしい隣人とはケンカばかりの毎日を送っていたが、それはいつしか日課となり、かけがえのない友情となる。そして、オーヴェの凍てついていた心は少しずつ溶きほぐされ、愛する妻との思い出を語り始めたのだった―――。

▼Information
『幸せなひとりぼっち』

2016年12月17日(土) 新宿シネマカリテ・ヒューマントラストシネマ渋谷 他全国順次公開
脚本/監督:ハンネス・ホルム
原作:フレドリック・バックマン
出演:ロルフ・ラスゴード、バハー・パール、フィリップ・バーグ、アイダ・エングヴォル、カタリナ・ラッソン
配給・宣伝:アンプラグド
公式サイト:http://hitori-movie.com/

 


© 2016「14の夜」製作委員会



4.『14の夜』

オリジナル脚本『百円の恋』で、日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞した足立紳。そこに生きている人間の温度をとくとくと感じることができるストーリーと、絶妙なタイミングで織りなされるユーモア。そんな物語で、私たちを魅了した脚本家の監督デビュー作だ。観ないわけがない!

元々は演出家志望だったという足立監督は、“14才”を選んだ理由をこう語った。
「何となく自分が思い通りに生きていないなと思い始めるのは、そのぐらいの時期なのかなと思ったんです。自分自身と折り合いをつけられなくなった時に、ゼロになることを怖がらず、そこからどうするのかというところを描きたかった」主演を演じた犬飼直紀の、感度の高さ、複雑な時期ならではの面持ち。
素晴らしかった。

青春の入り口。ああ、そうだった。こんなんだった。
そんな風に、自分の“いつか”と重なるところを見つめていた。
同時に、大人になった今の自分はこう思う。
振り返ってみて初めて「青春」って言える。
そのさ中では、きっと今が青春だ! なんて思ってなかった気がするのだ。
ただただ、何かやるせなくて、笑いたいのか、泣きたいのか、わからない瞬間があったりして。
焦り、憧れ、優越感、劣等感、恋、性、もっと名前がないもの全部。
スクリーンの中の彼らと同じ、とにかく必死だ。

じゃあ、大人になったら全部がわかる?
そんなことってない。今だって、呼び名のない気持ちに出会うことはある。
生きてきた時間だけ、自分自身を飼い慣らせない不甲斐なさはむしろ大きい。
「思うように生きられていないけどどうすればいいのかわからなくて、そういうところから目をそらして生きているのは僕も同じなんです」
監督の言葉に立ち戻って思う、エールのような映画だったと。
14才だけじゃない、14才を経た大人のためのエールだ。

▼あらすじ
1987年、田舎町。中学生のタカシは、どうにも悶々とした日々を送っている。父親もカッコ悪くて嫌い。会うたび絡んでくるヤンキーたちも鬱陶しい。隣に住む幼なじみで巨乳のメグミは、ちょっと気になる。そんなタカシが柔道部の仲間たちと入り浸っている、町に1軒だけあるレンタルビデオ屋に、AV女優のよくしまる今日子がサイン会にやってくるという噂が聞こえてきて…。

▼Information
『14の夜』

12月24日(土)よりテアトル新宿ほか全国公開
監督・脚本:足立紳
出演:犬飼直紀、濱田マリ、門脇麦、和田正人、浅川梨奈(SUPER☆GiRLS)、健太郎、青木柚、中島来星、河口瑛将、稲川実代子、 後藤ユウミ、駒木根隆介、内田慈、坂田聡、宇野祥平、ガダルカナル・タカ、光石研
配給: SPOTTED PRODUCTIONS
HP :14-noyoru.com




©Jill Furmanovsky

 

5.『オアシス:スーパーソニック』

1996年、マンチェスターの公営住宅でとあるインディーズバンドが生まれた。リアム・ノエル兄弟を中心に、のちに、数々の名曲を世に放ち、世界的スターとなった、伝説のロックバンド、オアシスだ。

前座で出演したグラスゴーでのライブには、ほとんど観客がいなかった。
その夜の数少ない観客だったのが、アラン・マッギー。クリエイション・レコーズのトップだ。その場で契約を持ちかけ、程なくしてオアシスは、“ロックンロール界の悪ガキども”という異名で知り渡ることになる。
そして、その代償に、兄弟間の関係性は大きく揺れ動く。

自分たちを取り巻く騒ぎや、それに伴う知名度の上昇。
それをめぐり、兄弟の受け止め方は正反対だった。
兄弟がステージ上でケンカを始めてしまう可能性も十分にあった。
それでも、何百万もの観客が彼らのステージを待ち続けた。

製作総指揮:リアム・ギャラガー、ノエル・ギャラガー。
このドキュメンタリーで描かれるのは、ありのままの2人の姿だ。
『オアシスはフェラーリと同じ。ルックスも音も最高。でも飛ばしすぎると制御できない』
惜しまれた解散から約8年。
加速し続けたバンドの真実、兄弟の本質、その全てが今、描き出される。

▼あらすじ
オアシス初のドキュメンタリーで、リアム&ノエル・ギャラガーが製作に参加したバンド公認作品。アルバム7作品すべてがUKチャート1位に輝き、全世界でCDトータルセールス5000万枚以上以上を記録するなど輝かしいキャリアを持ちながら、2009年に解散したオアシス。その歩みを、多数のライブ映像や最新インタビュー、時代を象徴する名曲と共に描く。

▼Information
『オアシス:スーパーソニック』

12/24(土)より 角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開
監督:マット・ホワイトクロス
製作総指揮:リアム・ギャラガー、ノエル・ギャラガー、アシフ・カパディア
配給:KADOKAWA


Text/Miiki Sugita

出典:She magizine

INFORMATION

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